●日本経済の問題点
@人材 日本経済に人材の危機が深化している
 本日(2005.11.02)朝日新聞の1面に2つのニュースが載っていた。
1つは、昨日の東証のシステムダウンの問題で、増強時のソフトの欠陥であり
もう1つは、JR西日本の新ATS−Pの設計ミスの発見漏れの問題でした。
 前者は、多分コンピューターシステムを作った経験を持った人材が経営者の中にいなかった人材の経営からの卒業が引き起こした問題だと思います。こうしたシステムミスは、経験者にはすぐ分かるミスであり、よくあるミスなので、経営者に人材を得れば、プレゼンのときに発見できるミスであり、その時にしか発見できないミスで、気付いても未経験のほとんどの経営者には価値が分からない問題です。
 後者は、正に品質保証体制の問題で、安全や品質を知った経営者が企業の中から卒業してしまったことで起こった問題だと思います。一つの発見を問題意識として捉え、どのように他に波及させなければならないか、それが人材不足のときどう経営者を動かし、実現させるのか、もし駄目ならトップ経営者を首にするほどの働きが必要です。
 今や日本経済は現場を経験した経営者が企業を去り、もうすぐ現場を経験した技術者が現場を大量に去っていく時代を迎えて、日本の人材危機は深まっています。
 このままでは、日本は事故が連続発生する社会になってしまうでしょう。対策は、企業を去った、また去ろうとしている人材に経営者の相談者として、現場部門の部門長の相談者としてサポートできる構造を作る必要を痛感しています。
その人材に支払う費用は、年間百万円、1事故防止ごとに百万円を支払う程度でも良いのではないでしょうか。
気に食わなければ、年間一千万円、1事故防止ごとに1千万円でも良いのですが。
団塊の世代が去るまでに早急に手を打っておく必要を感じる今日この頃です。
A貧困 深刻さ増す日本の貧困

 日本の貧富の格差は、小泉政権によって、大きく広がってしまったと思っていたが、ここに京都大学教授の橘木俊昭の論文が朝日新聞に掲載されていました。これから勉強を進めて行きたいと思います。

 筆者の勤務する京大経済学部は『貧乏物語』(1917年出版)で有名な河上肇を擁していた。マルクス経済学の闘将として有名な彼によって、戦前の日本における貧困が描写、分析され、政策も議論された。戦前の日本は資本家と労働者、地主と小作人という階級対立で象徴されるように、貧富の格差は非常に大きかった。敗戦後の経済復興、高度経済成長期を経て、貧富の格差は縮小し、貧困問題も深刻でなくなった。人々は豊かではないがなんとか食べていける所得を稼ぐことができたのである。一億総中流が流布されたことでもそのことがわかる。 しかし、80年代あたりから所得分配の不平等化が進行し、ごく最近に至って貧困が深刻な経済問題になっていることを示したい。マルクス経済学者でなくとも、貧困は重大な経済問題である。現在筆者は日本の貧困問題を鋭意研究中であるが、本稿はその序曲である。

 ごく最近OECD(経済協力開発機構)は加盟国の所得分配と貧困の現状に関する比較調査を発表した。貧困率(国民のうち何%の人が貧困者であるかの比率)に注目すると、日本は15・3%とされた。高い貧困率の国は、最高のメキシコ20・3%に次いで、アメリカ、トルコ、アイルランドと続き、日本は第5位の高い貧困率である。これらの国のうち、メキシコとトルコはまだ中進国といってよく、先進国に注目すれば、日本はなんと第3位の高貧困率の国という衝撃的な事実である。貧困をどう定義し、かつ計測するかは論争の的である。国によって経済や社会の状況が異なるので、国際比較には困難が伴う。そこでEU(欧州連合)やOECDはその困難を避けるために、すべての国に共通の尺度で貧困を定義して、比較可能性を高めた。それは全国民の平均的所得の50%以下の所得しか稼いでいない家計を貧困者とみなす。この共通定義に従うと日本は15・3%と計測される。10年ほど前では8%台だったので、2倍前後も増加している深刻さである。このことはわが国での貧困救済政策の最終手段である生活保護制度の受給者の数でも確認できる。ここでの貧困は地域や家族構成に応じて、最低限生きていくための生活費が計上されて、その額が貧困線と定義される。10年ほど前は60万世帯であったのが、現在では100万世帯を超えた人々に支給されている。個人レベルでは90万人前後であったのが140万人あたりと、どちらも貧困者の急増を物語っている。
 先程のOECDの数字では、誰もが貧困率が高いと想像するアメリカは17%であり、日本もさほどかわらない高さである。ちなみに最も低い貧困率はデンマークの4・3%である。日本の貧困がいかに深刻であるかが、ここで述べた国際比較と時系列変化で確認できるのである。

貧困率(OECD発表)
1位 メキシコ 20.3%
2位 アメリカ 17.0%
3位 トルコ
4位 アイルランド
5位 日本 15.3% (10年前 8.0%)
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トップ デンマーク 4.3%

              なぜこうなったのか。様々な理由が考えられる。第1に、ここ十数年続いた不景気が原因であることは容易に想像がつく。失業率が5%前後にまで達した。失業は生活苦の代表である。さらに、深刻な不況は賃金・所得の伸びを大きく低下させたことを忘れてはならないし、その影響は低所得者により深刻であった。 第2に、労働者の間でフリーター、パートタイマー、派遣社員といった非正規社員の数が激増した。これらの人の雇用は不安定で、時間あたり賃金も正規社員と比較してかなり低く、かつ社会保障制度からも排除されている。いわば劣悪な労働条件の中にいる労働者が激増した。第3に、高齢者間の貧富の格差が拡大している。OECDの調査によると、日本において66歳〜75歳の人の貧困率は19・5%、76歳以上の人は23・8%で、高齢化の進む日本ならではの姿である。ちなみに、18〜25歳の若者の貧困率も16・6%とかなり高い。これは若者の10%前後に達する失業率の高さや、フリーター問題から想像できる数字である。日本は若者・高年齢層に貧困者が多いのが特徴となっている。第4に、日本も離婚率が上昇しており、いわゆる母子家庭の所得の低さが貧困の一つの原因となっている。女性の賃金が低く、良い仕事を見つけることの困難さ、子育てをしながら勤労することの難しさ等が背後にあることはいうまでもない。

 以上が日本の貧困率が高いことを現象面から説明するものであるが、もろもろ諸々の制度がこれを背後から後押ししていることを述べてみよう。第1は最低賃金制度である。本来はすベての労働者に生きていけるだけの賃金額を保障するのがこの制度の趣旨であるが、日本ではこの最低賃金額が他の先進国と比較して低い。しかも驚くべきことに生活保護支給額よりも低いことがわかっている。 最低賃金あたりの労働者は、主として若者と既婚女性が中心なので、親や夫の経済支援があるので低賃金でも生活苦にならない、という考慮が日本にあったからである。社会全体の雰囲気として、高い最低賃金は企業経営を苦しめるので避けた方がよいとの配慮もあった。最低賃金の上昇は雇用の削減につながるとの反対論も強い。しかし、月額10万円を少し超える最低賃金額であれば、一人で暮らしていけない。このまま放置していてよいか、再考を要する。 第2に、生活保護制度がうまく機能していない。わが国ではミーンズ・テスト(資産調査)が厳しいことと、貧困者に恥の感情もあって支給されるべき人に支給されていない事実がある。もとより貧困線をどこに設定するかは慎重になされねばならないし、働ける人にはできるだけ働けるようにする政策との兼ね合いも重要であるが、生活保護制度は抜本的な改革を必要とする。 

 日本の貧困問題は想像を超えて深刻さを増している。一見豊かさを成就したわが国だが、新しい姿で出現している貧困を解明し、かつ撲滅を図る政策の必要性は高まっている。

貧困率 日本の一世帯当たり年間所得の平均値は590万円、中央値は476万円です(02年)。OECDの貧困率の算出方法に従えば、中央値の半分―238万円より所得の少ない世帯の割合が貧困率となります。OECDは、世帯単位の所得を個人単位に推計し直して貧困率を計算しています。
B豊かさ 「人間の豊かさ」指数、日本はベスト10から転落
2014年7月26日発表日本17位に下落

 国連開発計画(UNDP)は7日、世界各国の開発の現状をまとめた05年版「人間開発報告書」を発表した。日本は健康、教育など「人間の豊かさ」を測る人間開発指数で177カ国・地域中11位(前年は9位)と、初めてベスト10から転落した。女性の政治・経済分野への進出度を示すジェンダー・エンパワーメント指数(GEM)は43位と、先進国では極端に低かった。

 人間開発指数は平均寿命や就学率、1人あたり国内総生産(GDP)などをもとに測定。日本は調査が始まった90年と91、93年は1位だったが、バブル崩壊による経済の低迷で徐々に順位を下げ、00〜04年は9位だった。1位は92年と94〜00年がカナダ、01年からは5年連続でノルウェーが占めている。
→小泉自民公明政権は人間の豊かさまで奪った

 日本は他の先進国に比べ、社会人が大学に戻る例が少ないなど生涯教育で得点が少ないことが順位を下げる要因になった。ただ、大学院に相当する教育を企業が社内訓練で補っていることや、就学率に反映されていない海外留学の数字などが不利に働いた事情もある。

 GEMは国会議員や企業の管理職などに占める女性の割合や、男女の所得格差を反映する指数。調査対象は80カ国で、日本は前年から5ランク下げた。日本より上位にある42位のタンザニアは、人間開発指数では164位の低開発国。女性の社会的地位の向上が依然として日本の大きな課題となっている。

C格差 ニューオルリンズに思う
 約30年前、ニューオルリンズを訪問した。瀟洒な住宅がある高級住宅街をバスで案内された後、ジャズのながれるストリートを歩いて、アメリカの夢を追った。
それが、今や貧富の差が拡大(小泉自民公明政権も目指している)、ニュースが流れたときは、アフリカの貧民街のニュースかと思った。
 大統領は、長い休暇をわずか2日だけ短縮して、対応を開始した。遅きに失した。儲かるならイラクでも行くブッシュ、自国民でも貧乏人なら無視する厳しさ。テレビで助けられて写っているほとんどの人々は白人。道路で放置されているのは、丸々太った黒人。南部の暗部を見た。
 今や、日本もOECDの発表では、アメリカに続いて、貧富の差が大きい国の5位にランクされている。この5年間の間に、総中流意識の国が小泉自民公明政権で弱者を切り捨てる国になってしまった。
恐ろしいものだ。それを弱者が支持する。