1章 ホタルの種類と形態

1−1 ホタルの種類

 世界中には、約2000種類のホタルがいると言われています。その中で日本列島には、44種類〜50種類が住むと言われていますが、成虫がよく発光するのは14種(*1)で、その主なものをご紹介してみると、次のようになります。

 1.ゲンジボタル

日本固有の種であり、大型で、光も強いので、昔から最も知られていて、生息地とともに全国で10個所が国の天然記念物に指定されています。体長はオスは14o前後、メスは18o前後で、発光の明滅周期は西日本では2秒、東日本では4秒程度です。

 2.ヘイケボタル

  九州から北海道、さらには東シベリアや韓国にも分布し、湿地や水田を取り巻く水辺環境にたくさん生息していることから、これも昔から一般によく知られています。体長はオス10o、メス12o、発光の明滅周期は1秒です。

 3.ヒメボタル

  日本だけに住んでいるホタルで、本州、四国、九州に分布しています。姿はヘイケボタルによく似ていますので間違え易いですが、体長は6〜11oとやや小さく、目が大きく、胸の黒い模様は逆三角形をしています。 発光は、約1秒ごとに規則的に閃光を放ちます。(周期が0.5秒のものもいます。)

 成虫が夜に活動し、発光するのは近畿地方では主にこの3種です。光らないホタルもたくさんいます。また幼虫の時だけ光るホタルもいます。そのほかのホタル類の幾つかを、ホタル類の姿図表でご紹介しておきましょう。(ホタルの姿図表参照)

 私達がこの「しあわせの村」の日本庭園に飛ばそうとしたのは、@のゲンジボタルです。 三月、ここに幼虫を放流して、5月23日から飛び始めました。その姿は下記の写真です。

これが毎年続けて飛ぶようになってほしいと願っています。

平成16年6月2日 しあわせの村 日本庭園で撮影

(*1) 「ホタルの飼い方と観察」 P45 大場信義  ハート出版   1993年7月8日発行

1−2 ホタルの姿図表



1−3 注意すべき遺伝子の問題

 最近の研究によれば、同種のホタルであっても、地域ごとに発光パターンや生態が異なることがあり、遺伝子も固有であることが明らかになっています。

 そのことから地域固有のホタルの遺伝子を保存することが、ホタルの種の保存を確保する上で欠かせない要件になっています。

 そのため、やたら遠方からホタルの幼虫を、無配慮に持ってきて養殖放流することは厳に慎まねばならないと言われています。

  これに関する研究「遺伝子から見たホタル個体群の地理的分布と遺伝的分化」(*1)によれば、ゲンジボタルは南方から九州に入ってきて分化し、現在の日本産ゲンジボタルには、東北、関東、中部、西日本(近畿、中国、四国)、九州北部、九州南部地方の6つのグループが存在すると報告されています。

 この地理的分布を示したのが、下の(図1)です。

 私達もこの地域固有のホタル遺伝子分布状態を攪乱しないように、今後とも十分注意して養殖や放流を進めて行かねばならないと考えています。


 (*1) 福井工業大学 大学院 工学研究科応用理化学専攻バイオテクノロジー研究室

日和佳政*・馬場弘孝*・草桶秀夫(福井県福井市)の研究から転記